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私は貴方に恋をした

第1章 私は貴方に恋をした


明石がその道具を見ながら感心したように声を漏らすのと、こんのすけが作りたい庭の理由に思い至るのはほぼ同時だった。
楓も特に隠すつもりはないので素直に頷き、手伝うと言うこんのすけに微笑んで頭を撫でてやるとゆらゆらと尻尾が揺れて目が気持ちよさそうに細まる。
すりっと擦り寄ってくるのを更に撫でながら、まだ当分先だから朱里の本丸には内緒だと言いつけると、胸を張って任せて下さいと応える。
それから暫くこんのすけを構ってから見送り、楓はそれを手首に嵌めて執務を再開する。
嵌めた直後はゆらりと本丸の気配が揺らいだがそれはほんの一瞬で、その揺らぎはこんのすけが遮断してくれているはずなので、朱里の本丸にまでは伝わらないはずである。
楓は僅かばかり顔を顰めたが、それ以上は表に出さず通常通りに執務をこなす。
明石は傍に居るだけで特に何もしないがいつもより伝わる霊力が弱いのが僅かばかり不安になる。

「主はん?」
「んー……明石に伝わる霊力が一番少なくしてあるから、がんば?」
「なんやそれっ?!」
「他の奴らだと不安になるだろー?」
「俺かて不安になりますわっ! ほんま俺の扱い酷くないですか?!」
「ないない、明石だから信用してるんだよ。慣れるまでだから、頼むわ」
「ぅっ……くっ、あかんやったら俺がソレはぎ取りますから!」

チラリと楓を見た明石に名前を呼ばれ、若干思案したものの素直に考えたことを伝えれば途端に叫び出す明石。
現在執務中の為、刀剣たちも内番に回されていて周辺には気配がない。
楓は明石の反応に意地悪な笑みを浮かべて、理由の一つを伝えてやれば珍しく本音がぽんっと返ってきた。
楓はそれに対して、ああ、やっぱり不安になるんだな、と納得しながらふわりと微笑むと大きな理由を一つ、ぽんっと明石に投げ渡す。
それは明石を懐柔するには十分な威力を放ち、言葉に詰まって頬を赤らめた明石がそっぽ向きながら悪態を吐くも内容は心配している事実だけを如実に表していて。
楓はクスクスと笑いながら、執務を再開する。しばらくは様子を見て着けるようにしていくつもりで、明石も当分は自分が近侍で被害は増大と諦めたのかがっくりと肩を落としながらも執務の手伝いを始めた。
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