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私は貴方に恋をした

第1章 私は貴方に恋をした


23

「呉羽様、お待たせしました!」
「ん? こんのすけか。頼んでたもんが来たのか?」
「はい!」

朱里の遺産処理が終わってから数日後、明石と共に事務処理をこなしていた楓の元にぽんっという音と共にこんのすけが現れた。
口には十センチ四方ほどの箱が咥えられており、ストンと床に降りると楓の傍まで駆け寄ってくる。
楓は一旦手を止めるとこんのすけが来るまで待って箱を受け取り、褒めるように撫でながらそれを机に置いた。
すぐ傍で顔を上げた明石が何を頼んだのかと興味津々に覗き込んでくる。

「ですが、どうされたんですか? これ以上本丸を広げるつもりはないから当分はよろしいと仰っていたのに……」
「ん、ちょっとな。どうしても庭を一つ作りたくなったんだよ」
「お庭、ですか?」
「主はん、それなんですのん?」
「あー……霊力増強アイテム。なんつーか、筋力上げるのに使う錘の霊力版みたいなやつだ」

明石を放って中身を取り出そうとしていた楓に、こんのすけが不思議そうに問いかける。
そう、以前に霊力の伸びしろがある審神者に対して修行や講習の案内が出た時に、楓はそれを高める気がないと断っていたのだ。
それを今になって頼んできたことに、こんのすけが疑問に思うのも仕方がない。しかも、手っ取り早い修行ではなく地道にコツコツと貯めていくタイプのアイテムを所望されたのだ。
楓は問われてどう言おうかと迷いながらも、やりたいことだけを伝えそれがどういう目的かは口にしない。
丁度そこに明石が割り込んできて、話はその箱の中身の話に移っていく。
こんのすけと明石が見守る中箱から取り出されたそれはリストバンドの様なもので、見た目は何の変哲もないが説明書には霊力を30%ほど抑制し放出しづらくする、とあった。

「えー……これ、嵌めたらこの本丸の維持が危ういんちゃいますの?」
「まあな。毎日少しずつ嵌める時間長くしてって、最終的にこれ嵌めっぱなしでも余裕でこの本丸維持できるようになったら霊力が上がってるっていう道具なんだよ」
「へぇ……」
「朱里様の為ですか?」
「ああ、まぁ、この間更地にしたおばあさんの家の庭、再現してやろうと思ってな」
「なるほど! ならば、わたくしめもお手伝いいたします!」
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