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私は貴方に恋をした

第1章 私は貴方に恋をした


「朱里の何も見ないお前が、どの口を下げてそんな暴言を吐くんだ? もし、本当にあんたが正しいことをしてるなら、ここに残って警察が来るのを待つが良い。来た警察に、中に不法侵入者が居るのだと言ってみろ? あることないこと、嘘を付けばお前にも火の粉が降りかかる……そうだろう?」
「なっ、なっ……」
「物盗りでもあったような室内で、警察に通報しないわけがないだろう? その犯人を、あんたも知っている。しかも、その片棒を担いで、警察が来たら拙い立場だ……違うか?」
「ちっ、ちがっ! わ、わたしはっ!」
「お、おい! 話が違うぞ! あんた俺に朱里が戻ってきたとき孕ませたら遺産の半分やるって言ったじゃねぇか!」
「へぇ……? そんな約束を、ねぇ……それで、婚約者だと?」

先ほどまで、至極丁寧な対応をしていた楓が一変して変わったことに驚き、その告げられる内容に心当たりがあり過ぎる恰幅の良い男性は脂汗を出し始めながらも必死に否定しようとする。
しかし、それはあまりにもまともに言葉にならず、更に重ねられる楓の言葉に先に尻尾を出したのは細身の若い男性の方だった。
口にした言葉は明らかに犯罪行為を示唆しており、楓はスッと目を細め問い詰める。目の前の男性は既に顔面蒼白だ。
楓はポケットから念のため用意してあった物を取り出し、男から離れ膝丸の方へ戻りながらチラリと恰幅の良い男性と足元に未だ座り込んだままの細身の若い男性を見る。

「先ほどのは録音させて頂きました。明らかに犯罪行為を示唆していますから、これも警察へ届けておきます。もちろん、貴方がたの顔写真と共に、ね」
「なっ、や、やめろっ! そんなことをしたらっ!」
「少なくとも、貴方がたに確認するために警察が出入りするでしょうね」
「ま、まってくれっ! それだけはっ!!」
「待ちませんし、いかような提案もお断りします。せいぜい苦しめばいい。分不相応に他人の金を横取りしようとした報いですよ。まぁ、未遂ですから罪には問われないでしょうが、評判はがた落ちでしょうね……」

膝丸を促し家の中へ入ろうとした楓が、くるりと振り返って目を細め、とある会社の名前を口にすると恰幅の良い男性は声を失くしその場に立ち尽くす。
にぃっと目を細め笑った楓のその表情は、二人の男性には悪魔の様に見えたかもしれない。
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