第1章 私は貴方に恋をした
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執務中、祖母の写真立てがカタリと音を立てて倒れた。
「あ…」
写真の中で微笑んでる祖母の写真立てを急いで戻し
よかった、硝子は割れてない
「祖母殿は…もう2、3年か?」
膝丸の問いにこくりと頷き数珠丸に撫でられる。
ここでの暮らしに随分慣れたなぁとしみじみ思う。
「主君、文が届いておられます」
「ありがとね、前田君」
前田君の頭をうりうりと撫で、顔真っ赤にして逃げられちゃって
あうーん、癒しがぁとしょんぼりしてたら
ごすっと膝丸から後頭部にチョップを食らい悶えた
「さっさと終らせてから遊びに行け」
「はぁい…」
さて、文は何だろうなと開き内容に
ひゅっと呼吸が詰まり固まる。 これは本家からの催促状
言わば脅し。
お祖母ちゃんと2人で住んだ思い出の家をさっさと処分しろ、さもなくば私を絶縁させ遺産を奪い取るぞと言う現実。
「こ、こんちゃん、こんちゃん!」
「はい!よばれましたぁ!」
元気よく出てきたこんのすけを抱き締めてその手紙を見せるとん?と首を傾げて
「おばあ様とお住みになられてた土地と屋敷は朱里様の名義ですよね?」
「うん…」
「遺書にも完璧な出来で遺産は朱里様のものですので他者が這入る隙は御座いません」
じゃあどうしてこんな手紙を送って来たのだろう?こんのすけと首を傾げてたら
脇にするりと手が入り、膝の上に座らされた
「楓さん…?」
背中の暖かさに少し心がホッとした感覚
楓さんは私の頭をゆっくりと撫でて、何で居るのか不思議だった
「膝丸が急に来てな」
そう言って茶化す様に膝丸を見る楓さんに
膝丸はぷいと顔を逸らせる
手紙を読んでほっとけ、と言われるだろうか
楓さんが手紙を読んでる間、不安に見ていると
「こりゃ朱里を誘い出す為に書いたな?」
「誘い出す?」
「放浪してんなら遺産と屋敷を寄越せって催促だよ。こっちは審神者やってるってのに」
楓さんは大丈夫、と背を撫でてくれて
良い笑顔で
「どうせなら家具をこっちに持ってこよう、おばあ様との思い出が詰まってるんだろう?」
「うん、うん」
「家は…悲しいが俺達は審神者だ。ここが家だ」
売ってしまって遺産もろとも此方に持ってこよう。
楓さんの言葉にうん、うんと頷いた。