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私は貴方に恋をした

第1章 私は貴方に恋をした


「……いい加減、その煩い口を閉じて頂けますか? ここは品格を重んじるレストランです、周囲からどう見られているかお気づきには?」
「えっ……?」
「な、なんですのっ?! べ、別に私たちはっ……」
「人の話も聞こうとせず、大きな声でぴーちくぱーちく喋りつづけて、食事の仕方も最低だ。それで? よく俺にぴったりだとか当然だとか仰れますね? 申し訳ありませんが、俺は血筋には興味がありません。地位が上だろうが下だろうが、その個人の人格のみを判断基準にします」
「ど、どういう……」
「貴女方の様な下品な人間と今後関わりあう気はない、ということです。辞めた、と言われた時点で諦めればいいのに店にまで迷惑行為をされたそうですね。警察に届けたとのことですから、せいぜい逃げる算段を立ててください」

デザートまで終わり、後は席を立つだけになった頃、それまで我慢していた楓が口を開き一気に言いたいことだけを告げて席を立つ。
優雅な動作で立った楓はさりげない仕草で全て外してあったジャケットのボタンを留めると、朱里に手を差し出して立たせる。
ゆっくりと立ち上がった朱里の腰に手を添え、出口の方へと身体を向けながら振り返ると若い女性の方へと視線を向けた。
女装をするとキツイ美人顔になる楓は、素の男性の姿でもかなりの美人である。
朱里が不安そうに視線を寄越してくるのを腰に置いた腕に力を入れ抱き寄せることで応えながら、ゆっくりと口を開く。

「自分に自信があるのは良いことですが、場をわきまえた衣装や小物での抑制を覚えた方がよろしいと思いますよ」
「なっ?!」
「では、これで失礼します。もし、次に同じようなことをするなら家ごと潰しますから……」

お忘れなきよう、と無表情になった楓が年配の女性を睨みつけ、若い女性を無視して朱里を促すと背を向けた向こうで雄叫びの様な声が上がった。
しかし、楓はそれを一切無視して歩き出すとホテルを出てエレベーターに向かう。
レストランは最上階にあるが、丁度来たエレベーターに乗り込んだ楓はそのすぐ下の階のボタンを押した。
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