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私は貴方に恋をした

第1章 私は貴方に恋をした


驚いて口をぱくぱくと開閉している朱里を面白そうに眺めて、頬や鼻の頭、額などに口付けながら朱里の言葉を片っ端から却下していく楓は最後に零れた朱里の不安に目を細める。
そうして、もう一度唇に触れるだけのキスを落とすと顔を覗きこんで問いかける。

「朱里は、俺が貧乏だったり、これから貧乏になったりすると嫌うか?」
「まさかっ! 楓さんが楓さんで居てくれたらお金なんて!」
「ふっ……朱里ならそう言ってくれると思った。これから会う奴らはそうじゃない、俺が金持ちだから目の色変えてるだけだよ。だから、俺は他の誰が何と言っても朱里が良い。ダメ?」
「っ……ダメじゃない」
「ふふ、ありがとう。無事に終わったら今日は久しぶりに下界に降りるし明日も一日許可取ったからデートしような」
「うんっ!」

朱里が楓の問いかけを即答で否定すると、楓はふわりと柔らかな笑みを浮かべて嬉しそうな表情になる。
額を合わせ、鼻先を擦り合わせ、囁くように言葉を繋ぎながら僅かに顔を離し、朱里の瞳を覗き込んで首を傾げれば朱里は一瞬声を詰まらせながらもフルリと首を横に振った。
首元で束ねられた髪の、その先端がそれに合わせてゆらゆらと揺れる。楓は目を細め、愛おしそうに朱里を見て頬に口付けると身体を起こして入口に突っ立ったままだった朱里を中へ促す。
どうせ下界に降りるなら、と二人分の申請を二日分取得していた楓はデートの誘いもさらりとしながら今夜の為の衣装を選ぶ作業に取り掛かった。
部屋の奥では、大量の取り寄せた荷物をせっせと荷解きする明石が居たりしたのだが、朱里がそれに気付いたのは衣装が決まる頃だったのはココだけの話である。
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