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私は貴方に恋をした

第1章 私は貴方に恋をした


楓がお店に出向き、その女性に会うということに朱里が不安になって俯きながらもぽつりと零せば、明瞭な返事が返ってきた。
しかし、後に続いた言葉は予想外で朱里はきょとんとした表情を浮かべて楓を見上げた。
楓の表情は、あ、これ悪いこと考えてる……と思ってしまうような笑みが浮かんでいて、事実、二度と会わない様にしてやると呟いている。
朱里が協力するにしても、一体何をするのか……ちょっぴり嫉妬したことを後悔しながら朱里は見つめてくる視線にこっくりと頷いた。
どうあがいても、楓が朱里のお願いやおねだりに弱いのと同じように、朱里も楓のお願いやおねだりに弱いのである。
そうして楓が本丸から下界への外出許可を取ったのは一週間後である。
朱里はその日、朝から楓に呼ばれて楓の私室へとお邪魔していた。中に入ると、床にも壁にも所狭しと色っぽい衣装がこれでもか! とばかりに広げてある。
もちろん小物もだが、着物はともかく洋服はどう見ても楓の着ていた様なものではなくサイズもデザインも朱里に合せてあるようにしか見えない。
一体何が起こったのか……。

「あ、朱里。おはよう」
「おはようございます、楓さん。これ、どうしたの?」
「今日朱里に着て貰う服選んでたんだよ。着物より洋服の方が良いか?」
「う……ん、できれば、でも、んっ……」

私は普段着で、とでも言おうとした朱里の口を傍まで来た楓が軽いキスで唇を塞いで止めた。
そのままちゅっ、ちゅっと軽くバードキスをされて朱里がとろんと視線を蕩けさせた所で唇が離れ額がこつりと合わせられる。

「今日は俺の虫除けになって貰わないとだから、しっかり着飾って、美人でナイスバディなとこを皆に見せびらかしてな?」
「えっ……?」
「俺が朱里のモノで、売約済みってことを宣言してくるの。それで解決」
「ええっ?! そ、それってお店的には……」
「もう従業員じゃないし、そもそも従業員は俺の事情知ってるし、むしろ相手が結婚相手云々とか抜かしてくるなら朱里に来て貰っていちゃつくのが一番効果的だろ?」
「そ……れは……」
「それに、店長任せてる奴の話だと、良い機会だと会せようとしてた女連れてくるって話だし」
「……わ、私で大丈夫なのかなぁ」
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