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私は貴方に恋をした

第1章 私は貴方に恋をした


顔を出したのは光忠で、盆を手に室内に入ってくるとミニテーブルを手際よく取り出すと上に紅茶のポットとカップ、それにケーキの乗ったお皿が乗せられた。
それじゃあお邪魔しました、と言って出ていく光忠を見送って朱里が目を瞬かせているので楓が声を掛けるとケーキと楓を交互に見て何か言いたそうに口籠る。

「光忠は料理好きだったからな、色々暇見て教えたんだよ」
「そ、れは分かりますけど、えっと、ケーキ?」
「そう、ケーキ。似合わない?」
「ううん、似合いすぎて困ってる……」
「なるほど。まぁ、ストレス溜まると甘いもん食いたくなるから、深夜の仕事だと買いに行くの億劫なんだよ」
「……色々、聞いても良いですか?」
「朱里のその、時々入る敬語が抜けるなら、な」

深夜の仕事、という言葉に僅かに考え込んだ様子の朱里が恐る恐る尋ねてくるので、悪戯っ子の様な笑みを浮かべて交換条件を出した楓はまたきょとんとした表情をする朱里にクスクスと笑う。
ひとまず、お茶が冷める前におやつでも食べようかと促してフォークを取ると一口切り分けて口元に運ぶ。
条件反射で開いた口の中にケーキの欠片を放り込んでやると、もぐもぐと大人しく咀嚼する。
それを楽しげに眺めながら自分も久しぶりのケーキを食べつつひと心地つく。今日はお互いの過去の話でもしようかと思い巡らせ、夕暮れ過ぎて膝丸が朱里を迎えに来るまで二人でのんびりと過ごした。
泊まる、泊まらないで一悶着あるのはまた別の話である。
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