第1章 私は貴方に恋をした
ナニコレ、羞恥プレイ?! と、叫ばなかったのを褒めて欲しい、そんな風情で顔を真っ赤に染めた朱里が自己紹介をするのを柔らかい笑みで見守っている楓に一部の刀剣たちはげんなりした表情をする。
別に悪気があるわけじゃなく、今まで飄々とした姿しか見たことがない主の甘い姿等早々受け付けない、というだけの話である。
なかなかに主に対して辛口評価が多い刀剣たちではあるが、決して嫌っているわけではないので朱里の存在は素直に祝福され迎えられた。
紹介が終わり、一人ずつ気になる刀剣が個別に挨拶に来て一通り収まるまでに少し時間が必要だったのは言うまでもない。
どうにか落ち着いて、楓が朱里と私室に入るとはぁ、と大きなため息が朱里から漏れて楓が苦笑する。
「悪かったな、もう少し落ち着いて紹介する予定だったんだけど」
「ううん、ちょっと恥ずかしかったけど、皆優しかったし嬉しかったから」
「ありがとう」
縁側で庭を眺めるように二人並んで座りながら会話を交わす。恥ずかしそうにはにかみながらも、声は弾み意識しなくても視えるオーラは明るく朗らかで喜びを表している。
それにホッとして、礼を言いながら髪を撫でるとこてんと寄りかかってくるので、それを受け止めて身体を支えるように腰に腕を回すと頭をすり寄せてくる。
猫の様な仕草にクスクスと笑みを零すと、上目遣いに窺われて空いている手で顎下を擽ってやるときゅっと首を竦める仕草をした。
頬に手を添え、上を向かせて顔を寄せると朱里はごく自然に瞼を降ろしていく。
それを視界に収めながら唇を触れ合せようとして、寸前で止めた楓は額に軽くそれを押し付けるだけで身体を起こした。
どうしたのかと目を開けた朱里が振り返る頃、こんこんと柱を叩く音が響いて楓の私室の障子が開けられる。
「主、邪魔してごめん。お茶だけ出そうと思って」
「いや、大丈夫だ。ありがとうな」
「どういたしまして。朱里さんも、主直伝の洋菓子なんだけど良かったら食べて」
「ありがとうございます」