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私は貴方に恋をした

第1章 私は貴方に恋をした


「楓さんっ?!」
「ん、待ちきれなくて迎えに来た。執務終わったか?」

コンコン、と執務室の入口にある柱を鳴らし顔を出した楓に、一瞬きょとんとした表情を浮かべてからはたと気づいた様子で慌てて駆けてくる。
苦笑しながらそれを眺め、目の前まで来た朱里の髪に指を通して撫で梳きながら問いかけると今終わったところだと返事が返った。
朱里が膝丸に声を掛け、以前と同じように短刀を一人近侍としてつけて楓と共にゲートをくぐると、何故かゲート前に楓の本丸の刀剣たちが勢ぞろいしている。
朱里が呆気にとられるのと同じように、楓の方も予想外だったのか驚いたように目を瞬かせる。

「主はん、お帰りやす。皆待ちきれんでいつの間にか集まりましてん」
「……なんだそれ」
「主、紹介してくれよ」
「薬研、珍しいな」
「主が大事にしてるお人なんだから気になるのは当たり前だろ?」

出迎え最初に口を開いたのは近侍の明石、その内容に呆れた楓に紹介を急かしたのは以外にも薬研だった。
兄貴然とした風体だが、どこか子供っぽい様子で漫画なら目をキラキラと輝かせている描写でも入りそうな雰囲気である。
チラチラと待ちきれない様に朱里を見ていて、楓はそういえば薬研はタイミング悪く朱里に合わなかったメンバーだったなと思い出す。
薬研以外にも期待に満ちた表情で待っている刀剣たちが、楓にはだんだんとマテをする犬に見えて来て視線にびっくりして背中に隠れた朱里を振り返ると困ったような、それでもどこか嬉しそうな笑みを浮かべた表情をした朱里の視線とかち合う。
楓が肩を竦め、おいで、と横を視線で示すと背後からひょこりと顔を出した朱里が照れくさそうに横に並ぶのを待って、口を開く。

「えー、つい先日口説き落とした俺の彼女の朱里。以前、まだ友人だった頃も少し出入りしてくれてたんだが今度からまた出入りするだろうから、見かけたら俺の居る場所か私室に案内して、お茶出してあげて」
「細川朱里です。その、楓さんとお付き合いさせて頂いて、えと、これからよろしくお願いします」

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