• テキストサイズ

私は貴方に恋をした

第1章 私は貴方に恋をした


13

想いを確認し合って、漸く恋人として落ち着いたところで楓は久しぶりに朱里を自分の本丸に招くことにした。
招く日取りを決め、朱里に了承を得てから楓は自分の所持する刀剣たちに周知すると、きょとんとした表情のあとえぇええぇっ!?と、盛大な叫び声が響いた。

「なんなんだ……なんでそんな驚く?」
「そら、この本丸持って数年、主はんが女の一人も作らず、盛らず、挙句あんな格好頻繁にしとったら……なぁ?」
「明石、お前な……」
「事実ですもん、しゃあないやないですか」

驚きすぎだろう、と自分の刀剣たちを見て不思議そうにした楓に若干呆れた様子で近侍の明石が答える。
明石の言葉に全員が一斉にこっくりと頷く中、がっくりと肩を落とした楓が文句を言いたげに明石を睨むが明石はどこ吹く風である。
この明石、拾ってきたは良いがあまりのやる気のなさに楓がにっこり笑顔でキレ、近侍につけてこき使い始めて早数年である。
意外に器用で教えれば何でもこなせるが故に、その内重宝されて今やすっかりと楓の側近である。
時折練度の関係で近侍を他刀剣に変わることはあるが、大体そのサポートで傍に付いていることが多い。
そんなコンビであるからか、他の刀剣よりよほど本音でやりあいすぎて気安いを通り越している。実は本丸内ではこのやる気なしコンビ! と、罵られることもあったりする。
それはさておき……全員の反応に若干拗ねつつも、呼ぶから、と改めて宣言し掃除を言い渡されて刀剣たちは一日大掃除することになった。

「おーい、こっちは終わったぞー」
「こっちもだ!」

夕方、あちらこちらで掃除が終わったことを告げる声が響き、その夜は楓が腕を振るってそこそこ豪勢な夕飯になったのは掃除のお礼である。
刀剣たちは主のそういう部分に苦笑しながらも微笑ましく、有り難く食事を頂くと数日後に訪れる主の珠玉との出会いを楽しみにしていた。
もちろん、一時期、主を訪ねて通っていたのだから会ったことがある者や実際に会話を交わし親しくなった者もいる。
その者たちが久しぶりの再会に心躍らせたのは言うまでもない。
そうして訪れた約束の日、楓はわざわざ朱里の本丸へと本人を迎えに訪れていた。
/ 116ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp