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私は貴方に恋をした

第1章 私は貴方に恋をした


「気持ちを言わずにキスしたのはズルかったな。不安にさせて悪かった」

額と視線を合わせたまま、囁くように言葉を落とすと朱里の瞳が不思議そうに、けれど先を促すように真っ直ぐと戻ってくる。
楓はそれを受け止めて、ふっと笑みの吐息を零すと続きを言葉にする。

「朱里が俺をどう思ってるかは判らないけど、俺は朱里が女性として好きだよ。他の誰も要らない、朱里が俺の唯一だ。認めちゃったからな」
「か、えで……さん?」
「ん? 俺の気持ちが判らなくて不安なんだろ? なら、ちゃんと伝えておく。不安になったら言えば良い。何度でも、朱里が安心できるまでちゃんと伝えるから」

もう一度、好きだ、と告げる楓の表情は他の誰にも見せたことがない甘さを含んでいるが、朱里にはそれを知るすべはない。
楓自身も過去をあれこれ告げる気もないし、比べる指標がないことを伝えて不安を煽る気もない。
ただ伝わる様に、朱里が安心できるようにと言葉を繰り返す。告げる度に少しだけ治まる朱里のオーラの揺らぎが、楓の不安も落ち着かせる。
頬を染めてもういい、と朱里が言うまで楓はただ自分が朱里を好きだという事実を伝える言葉だけを繰り返した。
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