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私は貴方に恋をした

第1章 私は貴方に恋をした


好意自体は本物でも、異性としては見て貰えないかもしれない不安もあるから余計にどうしようかと悩み、結局直球勝負に出たのが先の言葉である。

「でも、時々不安そうにしてる。迷ってる、って言う方が正しいか?」
「そっ……れは……楓さんが優しいから……」
「俺が優しいから?」
「……楓さんが、私のことどう思ってるのか不安になる……」

不安なんかじゃない、と違う、と繰り返す朱里を探る様に見ながら感じたことを伝えると、言葉を詰まらせながら罰が悪そうに顔を俯かせる。
ぽつりと落とされた言葉はとても小さかったが、二人しかいない空間には少し大きく響いたように錯覚させた。
楓はその内容にどういうことだろうと首を傾げることしか出来ず、少しだけ腕に力を入れて囲いを小さくすると根気強く朱里の言葉を待った。

「……今まで、優しかった男の人はみんな、私の身体しか見てなかったの。楓さんは違うだろうって思うけど、でも、優しいし、キス、するし……」
「朱里は好きでもない奴とキスするの?」
「え……?」
「まぁ、俺ももう三十過ぎてるしそれなりにオツキアイってのはしてきたり、もちろん身体だけってのもあったから何とも言えないけど……」

降りた沈黙に耐えかねたのは朱里で、ポツリポツリと語られる過去のお付き合いの話だろう内容に楓の顔は自然と顰められる。
しかし、同時に不安にさせた要因を理解すると気持ちを伝えておく方が良いかと、どこか肩の力が抜けて言葉が零れ落ちた。
問い掛けに、一瞬呆けた朱里が顔を上げ、視線が絡む。受け止めてすぐ、どこか気まずげに視線を逸らして楓は過去を振り返る様に遠い目で庭から望む橋の向こうの本丸を見つめる。
朱里の視線が下から楓が途切れさせた言葉の続き問うように、じっと向けられているのを感じて視線を現在(いま)に戻すと朱里の額に自分のソレを寄せる。
コツリと痛くはないけれど解る程度に当たる感触、互いの前髪が互いの肌を擽っていくのに朱里が身じろぐのを感じて自然と楓の口元が緩む。
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