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私は貴方に恋をした

第1章 私は貴方に恋をした


11

朱里が執務を再開してからもこまめに通っている楓は、今日も朱里の本丸に手土産持参で訪れていた。
毎回、行く前には必ず先触れを出すのでゲートをくぐると案内役の刀剣たちが待っているのもすっかりと慣れたものである。
手土産の御裾分けをその刀剣に渡し、案内されるのは朱里の離れだ。
中に入るところで案内の刀剣は本丸に戻って行ってしまうので、勝手知ったる状態で楓は奥へと入って行く。
朱里が居るだろう部屋の柱をコンコンと指で叩くと、少しの衣擦れの音の後パタパタと足音が聞こえて障子が開く。
同時に飛びついてくる自分より一回りほど小さい身体を受け止めると、しがみつかれるのでぽんぽんと背を叩いて宥めるのが日課になりつつある

「今日も来たのか」
「それはもちろん、ああ、膝丸も良かったら食ってくれ。差し入れ持ってきたから」
「ああ、分かった。俺もそろそろ本丸へ戻る。何かあれば呼べ」
「了解」

ぐりぐりと楓に抱き着いて頭を擦り寄せたまま離れない朱里に、僅かばかり肩を落として小さく息を吐いた膝丸が出ていくと楓は手土産を入れた袋の紐を腕に掛けてから朱里を抱き上げる。

「ふぁっ?!」
「いつまでもしがみついてたら歩けないだろ?」
「あ、ごめんなさい……」
「別に好きなだけ抱きついて良いけどな、とりあえず座らせてくれ」
「お、降ろしてくれたら私自分でっ!」
「大丈夫だから、落ちるぞ」

突然の浮遊感にだろう声を上げた朱里に、クスクスと笑いながらからかうように告げればハッとしたような表情をした後しょんぼりと項垂れて朱里は腕から降りようとする。
楓はそれを留めて室内へと歩き出すと、朱里が慌てだすので危ないからと大人しくさせて縁側へと移動する。
縁側で一度朱里を降ろした楓は先に縁に御座をかいて座ると戸惑っている様子の朱里の手を引きその上に座らせる。
朱里の方は楓のされるままに膝の上に横座りして途方に暮れているのか所在なさ気に楓を見上げて小さくなっている。
そんな様子に苦笑し、宥めるように髪を撫で梳くと気持ち良さ気に目を閉じていき引き寄せるとこてんと頭を肩に預けてくる。
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