• テキストサイズ

私は貴方に恋をした

第1章 私は貴方に恋をした


09

朱里を助け出してから二日、楓は自分の本丸で事後処理と執務を終わらせてからすぐに朱里の本丸に行っていた。
今日も執務を終わらせたので一通り自分の本丸の刀剣たちに声を掛けた楓は朱里の所へ行こうとしていたところだった。

「楓君、丁度良い所に居たね」
「松本さん、何か進展ありましたか?」
「いや、単独犯みたいだからあちらはもう事後処理だけだよ。それより、彼女の方はどうだい?」
「……まだ二日ですから」
「そうだね。それでも少しは落ち着いたかな?」

ゲートのある部屋に入ったところで別のゲートが開き、今回の誘拐犯の始末を頼んだ政府高官の松本煌鴉が出てきて楓は足を止めた。
顔を合わせた途端、にこりと笑んだ煌鴉に首を傾げた楓は告げられた言葉に頷く。
続いた問いかけには顔を顰めて言葉を濁すが、煌鴉は逃がす気はないのか問いかけを続けてくる。
楓は迷惑そうな表情を浮かべるが、煌鴉には通用しないのは長くなってきた付き合いの中で理解していた。
仕方なく話を聞く体制になると、煌鴉は苦笑しながら言葉を続ける。

「調書で一つ確認があってね、犯人が開いたゲートは確かに完璧な隠蔽処理が施されていたようなんだ。君の能力では発見出来なかったんじゃないかという話が持ち上がっていてね。どうやって見つけた?」
「なんだ、そんなことか……。松本さんには言ったことがあると思うんですけど、俺は生き物のオーラが見えます。人は特に顕著で霊力や感情が強いほどはっきりと色が付く」
「そういえば聞いたことがあったね。実際に霊力を視れる上級審神者にも確認を手伝って貰ったのも覚えているよ」
「今回の犯人は朱里への執着が強く、拐った場所は朱里の霊力に満ちていた。残留思念っていうのは存外強く染み付くもんなんですよ。そして、霊力とは関係ない部分でオーラを見ている俺には霊力で小細工された所で色を上塗りして濃くしてるだけにしか見えないんです」
「なるほど、わかったよ。上級審神者に確認を手伝って貰った時の資料と一緒に上には報告を上げておく。で、今日も今から彼女のところへ?」
「……そのつもりですが何か?」

朱里について何か言われるのかと身構えた楓に掛けられたのは調書に関することだったが、その内容は煌鴉ならば知っているはずの理由を問うものだった。
/ 116ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp