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私は貴方に恋をした

第1章 私は貴方に恋をした


05

保護した翌日、近侍に乱藤四郎を連れて現れた朱里にきょとんとした表情を浮かべた呉羽は、見知らぬゲートが出来た理由を知って納得した。
そして、わざわざ訪れた理由が自分が朱里を着飾らせた時に着けた髪留めだったことにまた目を瞬かせたのは記憶に新しい。
呉羽の周囲、特にこの本丸に審神者として就任する前は朱里の様に髪留め一つの為にわざわざ礼の品を用意して返しに来るもの等皆無だった。
酷い時はくれたんでしょう? と言いながら勝手に持って行ってしまう者も居たほどだ。
そんな中、朱里の反応は物珍しく、呉羽は袖触れあうも多少の縁か、と朱里から受け取った髪留めを手に本人を呼び寄せてその髪を綺麗に結い上げた。

「うん、やっぱり朱里に似合ってるわね」
「え? えぇ?」
「これ、貴女にあげたつもりでいたのよ。嫌いじゃなければ貰ってちょうだいな。お近づきの記念」

渡した髪留めで再び髪を結いあげられて驚いている朱里に、にっこりと綺麗な笑みを浮かべて言う呉羽はこれでなびいてくるなら今までの奴らと変わらない、そんな風に思っていた。
しかし、朱里は慌てながらも貰うこと自体に戸惑い、困惑したまま頷かない。それが余計に呉羽の興味を惹いたのは言うまでもない。

「じゃあ、交換。作ってきてくれたケーキ美味しかったから、また作ってくれないかしら? そのケーキのお礼、ならどう?」
「うー……でも」
「その髪留めね、買ったのは良いけど私にはちょっと似合わないからずっとしまってたの。戻ってきてもまたしまいこむだけだから……ダメ?」
「そ、その聞き方はズルいです」
「ふふっ、なら、決まりね」

いつまでも首を縦に振らない朱里に好感を持った呉羽は、少し強引であるのは承知で髪留めを押し付けると朱里は何度も髪留めと呉羽を見比べた後ふわりと笑みを見せた。
それから、朱里は何くれとなく差し入れがあってもなくても時間が出来ると呉羽の本丸へ遊びに来るようになった。
気付けば呉羽の本丸に居る刀剣男子たちにも顔なじみとなり、呉羽が執務室で仕事をしていると呼びに来るようになった。
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