第1章 私は貴方に恋をした
楓の言葉に補足するように茶々を入れるママに、朱里が目を瞬かせて楓を見てくる。楓はその視線に肩を竦め、甘えるように朱里の頭を抱き寄せると頬をすり寄せる。
擽ったそうにはにかんだ朱里を見て、ママが納得した様に頷くと楓はグラスに残っていたバーボンを飲み干す。
おかわりを注ごうとするママに、グラスに手を被せることで断ると朱里を見た。
「こっちに持ってるマンションも見るだろ?」
「いいの?」
「もちろん。もし審神者を止めることになったら一緒に住む場所だからな」
「……い、いの?」
「朱里が嫌だって言っても連れて帰るからな」
「うん……」
はっきりとしたプロポーズではないが、その先を約束する言葉に戸惑った様な朱里に強く言い含めると素直にコクリと頷く。
楓はその様子に、あと少しだけ様子を見た方が良いか? と、本丸の自室に隠してある指輪の存在を思い浮かべながらママに支払いを済ませて店を後にする。
朱里が居るにも関わらず近寄ろうとした男女は、全て店の従業員が抑えきっていた。
そして、その夜は楓が所有している審神者になる前まで住んでいたマンションに朱里と二人で泊まり、翌日のんびりと下界デートを楽しんでから本丸に戻った。