第1章 私は貴方に恋をした
「主はん、まだなんや入ってるようですよ?」
「あん? 保証書とかじゃねぇのか?」
「確かにそれもありますけど、耳飾りみたいですけど……」
「は?」
カサリと音を立てて封筒から滑り落ちてきたのは保証書の入った封筒と、小さなジッパーの袋。
中には小さなメモと一緒に確かにイヤリングだかピアスが入っていた。見れば、石が指輪に使ったものと同じものでメモには『石の余りで作りました。サービスです。成功を祈る!』という文字。
頼んだのは大学時代に良く一緒に馬鹿をやった友人である。諸事情で国内から居なくなることを伝えており、連絡を取ることはほとんどなくなったが、今回宝石店にまだ務めていればこの件を頼みたいと久しぶりに連絡を取ったのだ。
「あの、馬鹿……」
余計なことを、と思うが指輪とお揃いのデザインはとても可愛らしく朱里に似合うだろうと思えばむげにも出来ない。
余った石は特に必要ではないから好きにして良い、とは言ってあったがこういう不意打ちが来るとは……と、楓は苦笑して袋を持ち上げる。
指輪はまだだが、こちらは今日の内に渡してしまおう、そう決めて今度こそ明石に封筒の処分を頼むと指輪と保証書は自室に隠しに行き、耳飾りだけ手にして執務に戻った。
今日は朱里が来るんだったか、自分が行くんだったか、約束をすることなくけれど自然と執務が終わると二人一緒に居ることが多いその時間を楽しみに楓は執務に励んだ。