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私は貴方に恋をした

第1章 私は貴方に恋をした


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ある日の執務時間、楓がモニターに向かって執務を片付けていると背後でぽんっという音が聞こえた。
これはいつもこんのすけが現れる時の音で、楓は切りが良いところまで進めると手を止めて振り返る。

「呉羽様!」
「どうした、こんのすけ」
「お荷物をお預かりしてまいりました!」
「ん?」

咥えた荷物を差し出しながら、器用にしゃべるこんのすけにここ最近荷物が来る予定などあったかと首を傾げた楓はひとまずそれを受け取って検分する。
荷物の入った袋は一般的な茶封筒で怪しい所はない、差出人も書いていないところが怪しいが宛名は自分で間違いない。
中身は嵩張る物なのか、重さの割に膨らんでいて何か箱が入っている様だった。ハサミで風を切ると中身を取り出す。

「あ……出来たのか」

出てきたのはビロードの宝石店などで購入した宝石などを入れる際に良く見るソレで、何も怪しい気配がしないのを確認して箱を開けた楓は中身を見て僅かに目を見開く。
中に入っていたのは大輪の花をイメージした大粒のダイヤとその周囲に蕾をイメージした小さなカラーストーンと葉をイメージした楕円にカットされた緑色のカラーストーンがあしらわれた指輪。
リング自体はシンプルな輪だが、使われているのはプラチナだ。箱から出さずにその指輪を眺め、楓は満足そうに微笑む。
これを発注したのは少し前の話。玉鋼があるなら宝石もあるのではないか、と次郎に拾ってくるよう頼んで遠征に行かせていたのだ。
自分で取りに行きたいが、渡れるわけでもないので預かった石で使えそうなのを自分で大雑把に磨き、それを持ち込んでの発注だった。

「綺麗ですねぇ……」
「そうだな。ありがとうな」
「いえ! では、私は戻ります!」
「ああ、今度来る時は油揚げ用意しとくわ」
「きつねうどんが食べたいデス!」
「あはは、了解」

楓の言葉に目を輝かせて飛びついたこんのすけに笑いながら了承して、姿を消すのを見送ると再び指輪に視線を戻す。
まだもう少し様子を見るつもりではいるが、準備は出来たのだからいつでもプロポーズ出来るなと口元に笑みが浮かぶのは仕方ない。
背後で控えていた明石が箱の入っていた封筒を片付けようと手に取って、中に入っている物に気付く。
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