第1章 私は貴方に恋をした
暫くして布団を運んできた明石についでに己の分の布団も敷いて貰った呉羽は畳の上で寝入っている朱里を起こさぬように抱き上げて布団に寝かせる。
結い上げてある髪をほどいて手櫛で丁寧に梳くと、布団を着せかけて呉羽は立ち上がる。
「明石、今日はもういいわよ」
「主はん……」
「大丈夫よ、さっきも言ったでしょう? 初対面同然で手は出さないわよ」
物言いたげな明石の表情にまた一つ笑みを落としながら、呉羽も女性用の寝間着に着替えると並んで敷かれた片側へ身を横たえた。
明石はそれ以上何も言わず、退室の挨拶だけ告げると部屋を出ていった。
呉羽は静かに目を閉じると隣から聞こえてくる健やかな寝息を子守唄に自分も夢の中へと落ちていった。
翌朝、呉羽が目を覚ますと横に人の気配があり一瞬で昨晩の出来事を思い出すと身体を起こす。
朱里の普段の起床時間が判らず、陽の傾きを確認しておおよその時間を確認した呉羽はそっと起き出すと昨夜汚れ物を入れて貰った籠を手に部屋から出ていく。
着替えは念のため別の部屋でして、本日も女性ものを見に付けて洗い場へと行く。
「あるじさん、おはよう!」
「乱、おはよう。今日も可愛いわね」
「えへへ、あるじさんも綺麗だよ! それ、どうしたの?」
「ちょっとね、昨夜迷子を保護したからその子の服。貴方たちは寝ちゃってたり遠征行ってたりしたから知ってるのは明石だけなんだけど」
「へぇ! ね、後で会いに行っていい?」
「そうね……朝餉の時にでもいらっしゃいな。ね、これ一緒にお願い出来る?」
「いいよ!」