第13章 〇【エルヴィン】ご褒美に
事の始めは、ある嵐の日だった。
スラムと化した町外れにサラは住んでいた。
食べるものも無く、生きる希望もないサラは雨風に打たれながら死を待っていた。
その時。
闇の中を一つの光が浮かび上がり、サラを照らした。
「・・・君、大丈夫か」
男は話すこともままならぬほどに衰弱したサラを抱き上げ、何処かへ連れて行く。
犯されて捨てられるのか。
もしくは人身売買。
サラは静かに目を閉じて成り行きに身を任せた。
だが、連れてこられたのは暖炉のある宿。
美しい金色の髪をした男は土砂降りの雨で濡れた髪をかきあげた後、ベッドで力無く横たわるサラに向き直り、跪いた。
「・・・君に仕事を与える。引き受けてくれれば、それなりの生活が待っている。引き受けなければまた先程の場所に後戻りだ。・・・どうする」
話が出来ないと察した彼は、「イエスなら瞬きを連続で2回」、「ノーなら瞬きを1回」しろと言い、サラは瞬きを2回した。
「良い判断だ」
彼は口角を上げて、つけていた皮の手袋を取り、サラの痩せ細った手を握った。
「私は調査兵団団長、エルヴィン・スミス。よろしく」