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【刀剣乱舞】不死身審神者が死ぬまでの話【最強男主】

第1章 神の初期刀・前編(加州清光、大和守安定編)




「……昔の俺たちを知ってるってことは、主は他人のものだった俺たちの記憶があるってことでしょ」

「そうだね」

「何かさ、それが原因なのかも知れないけど……俺、自分があのひとの刀だなって実感できたことないんだよね。愛されてるはずなのに、どこか虚しいっていうか」

「……」


 寝る支度をする安定の手が止まった。何か思うところがあるようだが、清光はそんな彼の様子には気づかず話を続ける。


「カミサマみたいなんだよね、主は。そう、カミサマ。平等に恵みを与える慈悲深い神って感じ。そりゃ俺たちだって神だけど、こう、何か遠い存在って意味でさ。やっぱ、昔の俺たちを知ってるっていうのは何か特別な感覚なのかな……」


 何だか人間のようなことを言っているなと自分で思う。そう、最近人の身を得て喜怒哀楽を覚え始めた自分たちの方が余程人間らしいのではと思えるほど、緋雨には感情の起伏がない。いつも穏やかに微笑んでいるか、傷ついた刀剣のためにさめざめと泣くかのどちらかで、怒りや、憎悪や、侮蔑、絶望、興奮、悦楽、そういう人間独特の激しい感情を憂いや慈悲で全て補ってしまっているかのようだ。


 だからなのだろうか。どれだけ愛されてもこの締め付けるような胸の痛みが消えないのは。彼が与えてくれる愛は例外なく、穏やかで、温かくて、柔らかくて、突き刺さるような痛みや鋭さを一切伴わない。けれどいつもどこか遠いのだ。他人行儀とまではいかないが、彼の中にはけして他者には立ち入らせない一線がある。自分の過去を露呈しないのも、それがその一線の内側にあるものだからだろう。


 中が見えず得体の知れないそこから、出所の分からない慈愛が生まれ出て手渡される、そんな感じだ。それを偽られたものだとは思わないけれど、理由の分からない愛を与えられて手放しで喜べるほど、人間の感情を得た自分は楽観的ではいられないらしい。


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