【刀剣乱舞】不死身審神者が死ぬまでの話【最強男主】
第1章 神の初期刀・前編(加州清光、大和守安定編)
「そんなに気になるなら主に直接聞けば? それが一番手っ取り早いだろ」
「……答えてくれないよどうせ。すぐはぐらかされちゃうんだもん」
安定のシンプルな提案に、清光は唇を尖らせる。時折それとなく話を振ってみることもあるのだが、すべてうまくかわされてしまうのだ。あの奇跡のように美しい面立ちの下を無理矢理暴くような罪悪感はそう簡単に拭えるものではない。しかもあの顔で困ったように微笑まれてしまうともう探るどころか身体に力を入れることすら困難になる。聡い彼のことだ、おそらくそういう清光の心理を分かってやっているのだろうが。
思えば緋雨は審神者になって日が浅いとは思えないほど、清光たち刀の扱いに妙に慣れている。ああいう慣れはどこから来るものなのだろう? 幾ら考えても消えようもない疑問は、一度考えはじめると後から後から沸いてきて結局そのどれ一つとして消化できず胸底に重いわだかまりになって残る。それは緋雨に触れられ、優しい言葉をかけられれば一時的に消えてくれるのだが、恒久的な効果はなく時間がたつとまた新しいわだかまりを連れて戻ってきてしまう。最近はずっとその繰り返しだった。
髪紐を見つけたらしい安定は、浮かない顔をする清光を乾いた視線で一瞥した。
「まあ、確かに昔のことあんまり話さないよね主は」
「うん」
「べらぼうに強いし。もはや俺たち刀なんて必要なのかって思うくらい」
「……うん」
「しかも不死身なんてね。ほんと謎。そういえばこの前お前主にかばわれて助かったらしいけど、もし不死身じゃなかったら主死んでたよね。お前の代わりに」
「……」
今までの無関心さはどこへやら、安定が容赦ない言葉を吐く度、うつ伏せになった清光の顔がどんどん枕の中心に沈み込んでいった。まるで安定の言葉がかなづちになって清光の頭を上から打ち付けているかのような動きだ。
「安定のばか。嫌い」
「うるさい女々しい気持ち悪い」
「……」
「で? 結局何が言いたいわけ」
清光の悪態を華麗に一蹴する安定。取り繕うところのないさばさばした相棒の態度に不満を抱きつつ、清光はぼそぼそと喋りはじめた。