【刀剣乱舞】不死身審神者が死ぬまでの話【最強男主】
第3章 審神者になった白い鬼
「……あの子を、この手で殺せと。そう言うのだな」
「端的に言えばそうなります」
何の躊躇もなく肯定され、鬼神は苦い笑みを浮かべることしかできなかった。人間はこんな兄弟間の確執に対して何の感慨も持ち合わせてはいないのだろう。
自分の身内の不始末は自分で片を付けろ。罪を犯した弟を殺せ。そして、あわよくば相討ちしてお前も死ね。そう言外に言い含めたとしても、守るべきものを守るために、そうするしか彼らには方法はないのだ。自らと違う種族のことなど気にかけてはいられない。利用することでしか生きられない。何と無力で、哀れで、いじらしい生き物なのだろう。
何より、来たるべき時が来たのかも知れないと思った。元々いつかは通らなければならない道だったのだ。あの子を殺せるのは私だけ。私を殺せるのはあの子だけ。死を以て父を止めたあの日から、いつかこうなることは運命づけられていた。
怯えて、蓋をして、目を背けることはもう、止めなければ。
「……分かった。引き受けよう」
諦めと決意でもって、この日から鬼神は、審神者になった。