【刀剣乱舞】不死身審神者が死ぬまでの話【最強男主】
第1章 神の初期刀・前編(加州清光、大和守安定編)
「まあ別に、それでも良いんだけど」
しかし思っていることは裏腹に、そんな言葉がぼそりと清光の口をついた。そもそも隠しているのだから暴かれたくないのは当然で、その一線があるからこそ彼はあれだけの優しさと愛を惜しみなく振りまけるのだろう。それをもし無理矢理暴いてしまったら、今まで見たことのない彼の負の感情を引きずり出してしまうかも知れない。傷つけてしまうかも知れない。そして何より、嫌われてしまうかも知れない。そうなったらもう終わりだ。自分は生きていけなくなる。
そんなことになるくらいならたとえ量って分けたような、いっそ無慈悲なほど平等な愛でも、喜んで受け入れるのが得策なのだろう。そもそも自分は本来刀なのだから、こんな人間的な感情には蓋をしてただ彼の得物として在れば良いのだ。分かっている。分かっているから、初期刀として最も長い間彼に仕えながら、この葛藤をずっとひた隠してきた。
「良くないから言ったんだろ。馬鹿」
しかし、安定はそんな清光の悩む諸々を躊躇無く一刀両断した。そこから彼の今までの吐露の穴を残らず突かんとばかりに矢継ぎ早に反論する。
「ったく、主はあんなに優しいってのにさ。何が不満なんだよ。毎日俺たち全員に声かけてくれて、大事にしてくれて、気い遣ってくれて、傷が付けばすぐ手入れしてくれる。理想の審神者じゃん」
分かっている。愛してくれて、傷ついたら癒してくれて、それだけのことが自分たちにとってどれだけありがたいことか。自分たちが在るために必要不可欠なそれらのものすら、与えられずに放り投げられた同族など腐るほどいる。自分は幸せなのだ。それなのに、無償で与えられる愛情の性質に疑念を抱いて、それ以上のものが欲しいと駄々をこねるなんておこがましい。分かっているんだ、そんなことは。
「「虚しい」って、それは結局お前が他の刀より贔屓して欲しいって思ってるからだろ。主は平等に優しいから、自分にだけ構って欲しいってさ。でもそんなん無理に決まってるじゃん。刀はたくさんあってこれからもどんどん増えてくけど、主の体は一つしかないんだから」