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【刀剣乱舞】不死身審神者が死ぬまでの話【最強男主】

第1章 神の初期刀・前編(加州清光、大和守安定編)


「こっちはもう片づいたよ~」


 向こうで声がする。少し離れた所で敵と交戦していた第一部隊の刀達がこちらに来たようだった。


「って、主! また怪我したね?」

「……いや」

「うそはいけませんよあるじ! かおがひきつってます!」


 さっそく燭台切と今剣に責め立てられ、緋雨はばつが悪そうに顔を逸らした。誤魔化しても服の破れ具合と血ぬれ具合でどの程度の怪我をしたかは一目瞭然だ。


「いくら再生するからって、無茶は禁物だってあれほど言ってるのに!」

「思いっきり血塗れじゃねえか」

「またこれは派手にやりましたなあ」

「痛そう」


 第一部隊として共に出陣した同田貫、石切丸、骨喰もわらわらと緋雨の周りに寄ってくる。皆目立った負傷をした様子はない。今回は道中検非違使も出現したし、戦況はだいぶ苦しかったはずだが足りない分の戦力はすべて緋雨が補ったのだろう。刀たちのプライドに傷を付けないぎりぎりの所まで。全く恐れ入る。


 緋雨を囲む輪を、清光は少し離れたところから眺める。皆気づいているのだろう。彼にいつもよりひどい傷を負った形跡があるのは、弱い清光を庇ったのが原因なのだと。けれど誰も何も言わない。気を遣っているつもりなのだろうか。だとしたら余計な世話だ、責めたければ責めればいいのに。静かな苛立ちを抱くと同時に、そういう風に卑屈なことしか考えられない自分にますます嫌気が差していく。


「みんなご苦労だった。お前たちのおかげで、戦況も良くなってきたよ。大阪もあと一息で攻略できそうだ」


 凛とした声が土煙と血のにおいの満ちた戦場に響きわたる。溌剌とした、けれどやはりどこか哀しみを帯びたその声音は、敵すら慈しむ彼の心根を写しとったかのように辺りに折り重なる大量の屍の上に降り落ちた。


「さあ、帰ろう。私たちの家へ」


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