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【刀剣乱舞】不死身審神者が死ぬまでの話【最強男主】

第3章 審神者になった白い鬼




 ほとんど自嘲のような笑みを浮かべる。成程、胸の奥深くに隠し持っていたはずの過去も、この者らにとっては大きな時代の潮流の中に紛れ込む一つの史実でしかない。引き出し付きの棚ようなものだ。


 最先端の科学技術とやらで時の流れは一方向ではなくなり、どんなに厳重に秘めた記憶も容易に引きずりだせてしまう。けれどそれは第三者である彼らにとっては薄っぺらい紙上の事実以外の何物でもなくて、そこに何かしらの感情を覚えるはずもないのだ。


「我々も好き勝手に過去が書き換えられるのを黙って放置しているわけにはいきませんのであえて苦言を呈させていただきますが、この事実をお聞きになれば緋雨様、貴方様もご自身に少しでも責任があるとご自覚いただけるのではないでしょうか。


 確かに貴方様がお辛い思いをされたのは我々人間に拠るものですが、それでも肉親がこのようなことをしているのを見過ごすわけにはいかないはずです。慈悲深い貴方様であれば尚の事」


 慈悲深いかどうかは分からないが、うまく的を射た言葉であると思った。責任。贖罪。それらがこの不死身の化け物を縛り付けるのに最適な鎖であることを、この人間たちはよく理解している。


「貴方様がかつて経験したような屈辱はけして味わわせません。審神者になっていただけるなら相応の質の生活を保障いたしましょう」


 そこまで聞いて鬼神は、嗚呼、自分にはもう選択肢など残されていないのだということを知った。


 目の前の人間が今まで語ってきた話は全て事実だ。神格の高い彼に嘘は通用しない。あの子が、大切な弟が、兄である自分のために過去をねじ曲げ、いたずらに人の命を奪うような真似をしている。それは全て兄である自分の責任なのだ。


 血の通った兄弟なのに見過ごした。気づけたはずなのに見逃した。その「罪」はあの子を止めることでしか償えない。それ以外に何ができる。人間にも刀にもなり損ねた、戦うしか能のない自分に。


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