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【刀剣乱舞】不死身審神者が死ぬまでの話【最強男主】

第2章 神の初期刀・後編(加州清光、大和守安定編)




 彼らしからぬ、何かの感情を押し殺したようなやや固い声で紡がれた言葉。安定は直感的に、今の言葉こそ緋雨の本音であると思った。耐えるように伏せられる色違いの瞳が何かを、何か大事なものを覆い隠すように光って、けれどこちらは何をできるはずもなくただその光が薄い瞼の下にしまわれていくのを見ていることしかできない。


 置いて行かれるおそろしさ。緋雨はきっと、それを恐ろしいまでに思い知らされるような経験をしたのだろう。それがどんなものかを知れなくても、人よりも長い時を生きる存在である身としては、彼がただ一言その言葉を口にするだけで心臓を切り裂かれるような共感を覚えるのだった。


「だからその代わりにお前たちを護るんだ。壊すことなどないように。刀として、また人の身を得た者として、受け得る限りの幸せを与えて、あるべき所へ返せるように」


 目を閉じ、唄うようにそう言う緋雨を見て、安定は無性に泣きたいような気持ちになった。


 自分たちは良い。いきなり人間の肉体に引き下ろされて得体の知れない敵と戦わせられたとしても、納得できず苛立ったり不安を覚えたりするのは「人間」の部分だけだ。影響を受けるのは表面的なところだけで、精神は元々付喪神なのだから使役されることに苦痛を覚えるはずもない。

 そういうことを理解した上で、彼は自分たちが不自由なく、幸せに生きていけるようにと様々に心を砕いてくれている。中にはそういう気遣いの過ぎるのが気に入らないという偏屈な刀もいるが、少なくとも安定は彼のもとに顕現できて心の底から良かったと思っている。


(僕らは幸せだ、)


 けれどそれなら、あなたの幸せは一体、どこにあるというの?


 心を折り、たくさんの刀を政府の命じるままに顕現させ、それらの幸せの為だけに全てを尽くして。緋雨自身の望みが報われる場所なんて、どこにもないじゃないか。


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