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【刀剣乱舞】不死身審神者が死ぬまでの話【最強男主】

第2章 神の初期刀・後編(加州清光、大和守安定編)




 緋雨の自分たちに対する態度の本質など、わざわざ指摘するべきではなかったのだ。刀剣たちの心情の機微に対して驚くほど聡い彼が、それを自覚していないはずがない。身の切れるほどに痛感していて、それでも――こうして一部の刀剣たちが自分を責め立てるような事態が起こってしまったとしても、彼自身にはどうしようもないことだから、そのまま放っておく他なかったに違いないのだ……それなのに。


「もし本当の意味で私のものになってしまったら、お前たちはきっとつまらない刀になるだろうよ。私のこの自己本位な安い愛を呑み込んで」


 まるで誰でも知っている世界の真理を唱えるかのように、少しばかりの笑みさえ含めながら緋雨は言った。やたら決めつけるような物言いだったが、安定は納得いかずに胸の底を熱くさせた。「安い愛」だなんて、それを享受するこちら側はそんなこと一分も思ったことはないのに。


 たとえ量って分けたような平等な愛情でも、それを薄っぺらだとか偽りのものだとか、そんな風に思ったことは一度もない。特別に愛される「執着」にも近いもの、そういう人間らしい感情を向けられることはなくても、緋雨の愛は疑いようもなく本当のものだ。そう確信させるほど、緋雨は自分たち刀剣に似通ったところを持っている。それはもう、哀しいくらいに。


 緋雨がふと、安定に向けていた視線を下に落とす。安心しきってすうすうと眠りこける清光を、滴るほどの情け深さをたたえた瞳で見つめる様は、まるで人間の母親が幼い子供を見守る時のそれだった。


「そうして、無邪気に愛してしまったものが、壊れてしまうことの、おそろしさ」


 彼の白い手が清光の頭を撫でる。まるで割れ物に触れるかのようなこわごわとしたその手つきは、いつになく拙くほんの少し震えているにも見えた。


「置いて行かれるおそろしさには、私はもう耐えられない」

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