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【刀剣乱舞】不死身審神者が死ぬまでの話【最強男主】

第2章 神の初期刀・後編(加州清光、大和守安定編)



 想いを、基を、書き換えない。


 つまりこの人は、自分たちを否定する気が全くないのだ。
 何も求めてくることはない。押しつけることもない。ありのままを受け入れて優しく抱きとめてくれる。


 けれどそれは同時に、ここにいる刀剣たちには何も期待していないと言うことにもなる。だから感情をぶつけることも、何故分かってくれないんだと憤ることもない。そういうものだと受け入れてしまえば負の感情など抱くべくもないからだ。それがこの人の、絶え間のない無尽蔵な優しさを生み出す源になっている。喜ばしいのか、悲しむべきことなのか、それは簡単に判断がつくようなことでもないけれど。


 何がこの人をそうさせるのかは分からない。けれどきっとこの人は、ここにいる刀剣たちを自分のものにはしてくれない。大事な大事な借り物としての扱いしかしてくれない。おそらくは、永遠に。


 安定は諦めのように悟った。彼の中に長い長い時間をかけて折り重なった途方もない記憶や経験が、長い時を生きる付喪神の安定たちでさえ知り得ない何かが、今この場でも彼を縛りつけ苦しめ続けているような気がして、それはもはや、緋雨本人にさえどうすることもできない絶対的な運命のようなものであると思えたのだ。


 緋雨を苦しめているものは何なのだろう。政府からの重圧? 凄惨な経験による心の傷? 歴史改変にも大きく関わることなのだろうか。具体的に挙げようと思えばきりがないが、それがどんなものであれ、これほど長い時を生き、強大な力も持ち合わせる彼を縛り上げるほどのものなのだから、自分たちのような末端の神には想像もし得ない事情であることに間違いはない。それほどのものを、まるで隠された宝か何かのようにしか感じ取れず遠慮なしに暴こうとしていた自分が、今ではただただ腹立たしかった。


(気づいていなかったのは、僕と清光だけだったのかも知れない)


 少なくとも安定自身は、こういう風に緋雨に詰め寄る他の刀剣男士の姿を見たことはなかった。けれどそれを緋雨と会った記憶が封じられ、他の者に比べ彼のことをあまりよく知らないことのせいにしても、あからさまに不満と懐疑心を露わにし彼の傷を無理矢理に暴こうとした己の行動の浅はかさに対する羞恥は抑えようがない。

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