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【刀剣乱舞】不死身審神者が死ぬまでの話【最強男主】

第1章 神の初期刀・前編(加州清光、大和守安定編)




 耳が痛い。巨大な鐘が鳴るように、相棒の容赦ない言葉が頭の中でがんがんと響く。ここまで痛手を被るのは、その言葉が図星であるからに他ならないと分かっている。そうだ、結局はそういうことなのだ。もし緋雨が自分たちの間に引いている一線を取っ払い、すべてをさらけ出して快く迎え入れてくれたとしても、他の刀たちもその一線の内に入ることを許されるのなら、きっとこの胸中を蝕む虚しさは消えない。


 つまるところ、清光が欲しているのは真実ではなくて、自分だけがほしいままにできる特別な感情。慈悲に似た量産的な愛ではなくて、執着のような依存のような粘度をもった情愛。それを自分だけのものにして、過去の傷のせいでいつまでも膿んだままのこの心を癒したいだけなのだ。安定はそれを見抜いている。だからこれは正当な呵責だ。ここは本丸という共同体で、こんな独りよがりな願いは報われるはずもなく、それを叶えたい自分は我儘で自己本位で、どこまでもはた迷惑な刀。それはきっと、緋雨にとっても同じことだ。


 それでも、より純度の高い愛に飢えるのは自分の性質なのだと、この長年仕える者を同じくしていた仲間は理解してくれているものだと思っていただけに、責められることに怒りに似た感情を覚えてしまうことは止められなかった。


見栄が邪魔をするから伝えたことはないけれど、傷ついて、壊れて、汚くなって、捨てられて、そうして沖田の元にいられなくなった自分を、お前だけは知ってくれていると、だからこうして打ち明けたという節もあるのに。いくら何でも、そんなに責めるように言わなくたって。


「それなのに特別に愛して欲しいだなんて、よくもまあ言えたもんだよ。その爪だって毎日主に塗ってもらってるんだろ。もう十分優しくしてもらってるのに、いくら初期刀だからってわがままが過ぎ――」
「うるっさいな!! 分かってるよそんなこと!!」


 たまらなくなって安定の声を遮るように叫んだ。喉が熱い。灼けるように熱を持ったそこが不規則に震えて、嗚咽がこぼれそうなのをこらえていたら今度は目頭がじわりと湿り気を帯びてきた。枕の布地を渾身の力で握りしめる自分の両手が、汚らしく剥がれ落ちた爪の赤い塗料が、みるみるうちに滲んだ視界の向こうに溶けていく。


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