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その花の名は、

第2章 就任初日



まんばちゃんと手入れ部屋を出て、玄関にもどる。
確か、荷物をそのまま此処に置いてきちゃったんだよね。

鞄の隣には置いた時には無かった赤いジャージが置いてあり、メモに山姥切国広様の部屋着です。と書いてあった。

こんのすけが持ってきてくれたのかな。

『まんばちゃん。これ着替えだって』

「え?あぁ、助かる」

それから、目を通して置くようにと書かれた資料と本丸の間取り図と城下町地図を見た。

あまり、本丸内を案内してもらってないので、何があるか全く分からなかった。後で、歩いて回ろうかな。

でも、その前に夕食の準備しないといけないかな。

『あの、買い物をしに行こうと思うんだけど一緒について来て貰っていい?』

「写しなんか見せびらかしてどうするんだ」

『え?確かにまんばちゃん綺麗だし目立つけど、見せびらかすとかそういうつもりは、』

「綺麗とか、言うな。まぁ、あんたを1人にはできないからな」

なんとか、着いて来てもらえるらしい。
ボストンバッグの中に入っていたショルダーバッグに財布が入っていて、中身も入っていたので、そのまま街に出ることにした。

お屋敷を抜けると若干、急とも言える坂道があり、その向こうには街が広がっていた。海が見える。夕日で全体が赤く染まっていた。

坂を下り、大手門の重い木の扉をまんばちゃんに開けてもらい外に出ると、色々なお店が連なっているのが見えた。
意外と人多いなぁ。

私は彼が被っている布の端を掴んだ。

「何してるんだ、あんた」

『いや、逸れたりしたら嫌だなって。とりあえず、食料買わないと行けないから、あのお店行こう』

と、目についたお店に入ろうとすると、後ろから慌てたように止める声がした。

「布を持つのはやめてくれ。脱げる」

あまりに切実そうにいうので、パッと手を離した。
確かにズレていて綺麗な顔がよく見えてしまっている。

『あ、ごめん』

これは逸れないように、目を離さないようにして行くしかないかな。
じゃあ、行こっかと声をかけて、再び歩き出したところで彼が私の手を掴んだ。自然と手を繋いでいる形になる。

「あ、いや、これなら逸れないと思って。すまない」

『確かに、これなら逸れないね』

そう言って微笑むと、彼は少し安堵したような表情を見せた。


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