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その花の名は、

第2章 就任初日



本丸と呼ばれる屋敷に戻り、山姥切に肩を貸して手入れ部屋まで行く。小さなお人形さんが二体、棒に丸い布玉が付いたものを持っている。私に気がついたように一体が山姥切寝かし、彼方を出すように指示する。

その人形は、人型の山姥切には目もくれず、刀の方をぽんぽんし出した。

『待って。刀ぽんぽんして、傷治るもんなの!?』

「刀が本体ですからね」

『でも、人間の体だとそう簡単には治らないでしょ!?』

「まぁまぁ、今日はお手伝い札を使いましょう。これを使うと、短時間で傷口を治し元気に出来るのです。主人様の霊力は、だいぶ消費されますが」

『大丈夫!やりましょ』

お手伝い札をお人形さんに渡すと、静かに部屋の隅の小さな扉に向かい扉を開けた。中からぞろぞろと同じような人形が飛び出し、山姥切を取り囲む。

それからは、目にも留まらぬスピードで傷口がなくなり、服ももと通りになったので驚いた。


「まぁ、こんな感じですね。顕現、出陣、手入れの流れとしては。マニュアルは、主様の荷物と一緒に置いておきますので目を通して置いてください。また何かあれば、呼んでくださいね」

『うん、ありがとう』

ポンっと白い煙を上げて、こんのすけはいなくなった。手入れしてくれていたお人形さん達も動かなくなっている。

「山姥切くん」

横たわる彼に近づき声をかける。さっきまで深傷を負っていたので、起こすのは罪悪感があるがずっと此処にいるわけにもいかない。

にしても、山姥切くんって呼びにくい。やまんばちゃん。やまちゃん。ばぎりくん。ん〜、あ、まんばちゃん。でいいかな。

『まんばちゃん!』

と体を揺すって顔を覗き込むと、彼が目を覚ました。

「ち、近い!」

ばっと起き上がった彼が、私の手を払う。

『体、大丈夫?痛いところない?』

「あぁ、大丈夫だ」

その言葉に安堵する。

『そっか、良かった』



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