第2章 就任初日
何処まで自分のこと分かってるんだろう、彼は。刀として、人の近くにいても、人の生活まではよく分かってないのかもしれない。
見てるだけと、実際やる側では全く違うと思うし。
ガラガラっとお風呂場の引き戸が開いて、頭にバスタオルを被り、腰にタオルを巻いたまんばちゃんが入ってきた。
「それで、どうすればいいんだ」
『あっ、えっと、とりあえずそこに座ってもらっていいかな。右から、シャンプー、コンディショナー、ボディソープだよ。頭洗うのと、体洗うやつね。で、此処のシャワーは、銀色のこれを手前に倒すとお湯が出るから、それで洗い流してね』
「………なんとなく分かったような気がする」
間があったな。分かってなさそう。
『始めだし、背中くらい流すよ』
そう言って頭を洗い、背中を流した。
流石に前は自分で洗ってもらった。
頭を洗う最中に、目を閉じてもらうのを忘れていて、彼の目にシャンプーが入って、
「目が痛い。写しだからか」
と、言い出したので、すごく申し訳なくなった。
お湯に浸かるよう指示し、長湯しないようにだけ伝えてお風呂場を後にした。
一気に疲れた。人の世話って、こんなに体力と精神力使うんだな。相手が女の子だったら、多少楽だったとは思うんだけど。
さて、夕食を作らないと。
すっかり日は沈み、廊下も気味が悪いほどに真っ暗である。
何作ろうかな。
とりあえず、今日は簡単なもので良いかな。
台所に戻った私は、レシピ本を見つつお味噌汁と豚肉の生姜焼き、副菜はほうれん草の胡麻和えにしようと料理に取り掛かった。
私自体は覚えてないものの、身体は覚えていたようで料理を作るのに不自由はしなかった。
まぁ、元々、私が器用なタイプなのかも。
副菜が出来上がるとともに、炊飯器がピーッと音を立ててご飯が炊けた音がした。
2人だし、隣の茶の間でご飯にしたら良いかな。
人数が増えたら、広間で食べるようにしたら良いと思うし。
茶の間の電気をつけて、食台を布巾で拭く。
台所に戻ろうとした時、ゆらりと動く白いものが見えた。ぎょっとして、よく見るとまんばちゃんだった。
夜見ると、 心臓に悪いなぁ。
近寄って見てみると、ちゃんとジャージは着れているようで安心した。