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その花の名は、

第2章 就任初日



「…じさま、主様」

誰かに呼ばれてる気がして目を覚ますと、目の前に小さな狐がちょこんと座っていた。

地面がやけに近い。砂地で寝る趣味なんて持ってないと思うんだけどな。ゆっくり起き上がり、砂を払う。

周りを見渡すと、お屋敷の庭のようだった。
立派な庭に、玄関も見える。

なんで、私こんなところに。何故?何しに?そもそも、私は、誰?

「主様、ご説明致します」

そう言って、こんのすけと名乗る狐は説明してくれた。
何故私が此処にいるのか。これから、何をするのか。
でも、私の名前は知らないようだった。

「早速仕事致しましょう!日が沈まないうちに!」

元気な狐だな。てか、狐って喋れるんだなぁ。

「まず、お供である近侍を呼ばなくてはなりません。沙庭に向かいましょう」

玄関に向けて歩き出した狐の後を追う。

『審神者?私?』

「違いますよ。沙庭とは、神様を招いて身体を与え人間として顕現させる神聖な場所なんですよ」

玄関を開けると長い廊下が見えた。やけに広そう。人がいないせいか、薄暗い冷たい空気が漂っている。

「この廊下の先、向かって右側が沙庭という、刀を顕現させるお部屋です。さらにその右隣が鍛刀部屋と言いまして、新たに刀から作り顕現させる場所、左隣が刀装部屋。刀剣男士を護る役目をする装備ですね。それを作る部屋です」

『色々あるのね。てか、刀剣男士って何?』

「刀剣男士とは、顕現され人間の姿を得た付喪神のことを言います。基本的に刀を取り扱いますので、刀剣男士です」

『日本ならではの、武器だもんねぇ』

中にお入りください、というこんのすけの声に、引き戸を開ける。
綺麗な刀が一振、刀掛台に乗っている。

「それでは、初期刀となる初めの刀を顕現させてみましょう」

『え、どうやって?』

「念を込めるのですよ!何なら格好良く呪文的なものつけましょうか」

『その方が、やりやすいかも』

ただ、念を込めるっていうのもよくわからないし。

『神の宿りし刀剣よ、我が刃となりその身を捧げよ!」

その瞬間ふわっと桜の香りがして、花びらが舞い散った。その向こうに、人が見えた。

白い布を頭から被り、綺麗な金髪とエメラルドグリーンの瞳をしている。なんかもっと、武将的なのイメージしてたんだけど。


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