第1章 序章
説明しに来たのに分からないってどう言うことだよ。と、思いつつ、なんかとんでもない役目の新しい仕事を背負わされそうになっているという事は分かった。
『彼方側ってなんですか』
「彼方側というのは、審神者が所有出来る異次元空間ですね。まぁ、行った事ないので知らないですけど、街並みは江戸時代頃。物は此方側とあまり変わらず不自由はしないと思われますよ。で、その空間の中に、城があるのでそこで生活をして頂くようになります」
『あぁ、住み込みなんですね』
「えぇ、一生涯。彼方に行ってしまわれた方は原則戻っては来られませんので」
『え?じゃあ、私行ったら戻ってこれないって事?』
話が複雑な上に、意味わからないからついタメ口をきいてしまった。
「しきたりだから、椿が行かないといけない。椿が行った後、こっちでは死んだ事になってる。死ぬ気でやってもらわないといけない大事な仕事だ。代わりは居ないんだ」
『これ、私が生まれた時から決まってたの?』
「あぁ、拒否権はない」
しきたりと定め重視な家系だとは分かってたけど、もっと早くに行って欲しかったな。生まれた時から、決まってたのなら尚更。
「また、後日お迎えにあがります。資料に目を通しておいてください。あと、向こうに持っていく着替えなどの準備もなさっておいてください」
そう言うとスーツ姿の彼は、面談室を出て行った。その後に、続いて出て行こうとした父が、
「今まで黙って居てすまなかった。機密事項だったから、口止めされて居たんだ。椿は、昔からよく出来る良い子だった。この大事な仕事を四ノ宮家に恥じないよう務めてくれると信じてる」
と、言い扉は閉められた。
信じてると言われてもね。
仕事に慣れてきて、新しい事がしたいなと思った矢先に舞い込んできた、とんでもない話。
運がいいのやら、悪いのやら。
部屋に残された私は、静かに資料をめくり始めた。