第2章 episode 1
深く、そして暗い闇の中。
いつも物欲しそうに私を見る、赤く底光りする二つの目があった。
《ほう、オマエはワシが見えるか》
そう、私には小さい頃から奇々怪々なモノが見えてた。
それは人ならざる者で、言うならば霊的な存在。はっきりとしない輪郭にピリッと肌に感じる寒け。そして、周りの目がそれを物語っていた。
《珍しい娘(おなご)よ。哀れなものじゃ》
──ああ、そうか。これは私にしか見えないんだ。──
そう、幼子ながら認識できた。
そして、それを他者に告げてはいけないと。もし告げれば、私が独りになることはわかっていた。だから、恐怖を打ちのめして、私は普段通り生活を送っていた。その姿には誰も気づかない。私の霊体質にも、その根源にも。
だからそれでいい、私が我慢すれば済むと。いつか、消えてくれるからと。
そう信じていた。
だけどその存在は、消えてなどくれなかった。いや、それどころか前より強くなっていったのだ。
彼らは私を襲うくらいに。
そう、今の現状のように。
消えては浮上し、また消える。だがまた現れては私を襲う。
やつらはこうして何度も来る。
それは人型だったり、動物のような型だったり、鬼だったり。その品種は様々だ。様々なんだけど、その理由は私の体内にあると、お婆ちゃんは教えてくれた。
《オマエは特別なんだよ、》
私は、特別なんだと。
『それなら、なんで私は特別だと言えるの?』
《まだ幼いながらに、良い質問をするねぇ。ふふっ、それはね、オマエの体内には緋桜の力が眠っているからだ》
『ひおうの力?』
《ああ。オマエのその力はことの理念を覆す程に強力なんだよ。》
ことの、りねん?