第2章 episode 1
だが、赤い身体をした怪物の手がふっと私の肩に触れる。それは
《お前を食べれば、いいんだよッ!》
どんな抵抗も間に合わない事を意味してた。
ああもう逃げれきれない。
私は──死ぬ。
そう少女が迫り来る死に覚悟した瞬間、
「我が身に降りし、天盟(てんめい)ッ!」
『な!?』
夜の静寂を切り裂くように声が聞こえた。
『これは』
ハッと気付けば、目の前で紙が散らばっている。それはまるでスノーダストみたいに、夜の闇に白く光り輝く花を咲かせていた。
『綺麗』
思わず少女が呟いた、その刹那
《なんだ?》
少女の背後、真っ白に輝く1本の線が怪物の身体に入った。それは、怪物の身体を二分割するように。
『え』
《あ?》
どうやら怪物は痛くも痒くもないらしく、目を丸くしながら少女の前、黒いコートを靡かせる男性に目をやる。
が、それは少女も同じだった。
目の前にいる男性に目が点になる。
(貴方は──?)
少女は暗がりの中でよくわからない男性を見るが、その瞳が重なることはない。
《おいテメェー、俺の身体になにしやがった?》
ただ線が入っただけで、何も起こらない自身の身体に、怪物は静かに男性を見つめる。それに男はニカッと笑った。
「やだなー、そう焦らないで下さいよー。もう時期わかりますよ。その光りの意味が、ね?」
《なんだと?》
そう怪物が目を見張った瞬間、
《な、に?》
私たちの前、ズルッと怪物の身体が上下にズレた。