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黒蝶が飛ぶ頃に―陰陽師― R15

第2章 episode 1



だが、赤い身体をした怪物の手がふっと私の肩に触れる。それは


《お前を食べれば、いいんだよッ!》


どんな抵抗も間に合わない事を意味してた。



ああもう逃げれきれない。

私は──死ぬ。


そう少女が迫り来る死に覚悟した瞬間、


「我が身に降りし、天盟(てんめい)ッ!」


『な!?』


夜の静寂を切り裂くように声が聞こえた。


『これは』


ハッと気付けば、目の前で紙が散らばっている。それはまるでスノーダストみたいに、夜の闇に白く光り輝く花を咲かせていた。


『綺麗』


思わず少女が呟いた、その刹那


《なんだ?》


少女の背後、真っ白に輝く1本の線が怪物の身体に入った。それは、怪物の身体を二分割するように。


『え』

《あ?》


どうやら怪物は痛くも痒くもないらしく、目を丸くしながら少女の前、黒いコートを靡かせる男性に目をやる。

が、それは少女も同じだった。
目の前にいる男性に目が点になる。


(貴方は──?)


少女は暗がりの中でよくわからない男性を見るが、その瞳が重なることはない。


《おいテメェー、俺の身体になにしやがった?》


ただ線が入っただけで、何も起こらない自身の身体に、怪物は静かに男性を見つめる。それに男はニカッと笑った。


「やだなー、そう焦らないで下さいよー。もう時期わかりますよ。その光りの意味が、ね?」

《なんだと?》


そう怪物が目を見張った瞬間、


《な、に?》


私たちの前、ズルッと怪物の身体が上下にズレた。

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