第2章 episode 1
《もう鬼ごっこは終いか? 残念だなー》
ポツリ呟く怪物に、少女は真っ直ぐな瞳を向ける。
『残念? 貴方にとっては最高のシチュエーションだと思うけど』
なんせ、転んで立てない私を食べることなど安易なのだからね?
そう睨みつければ
《この状況でよく大口を叩けるな?》
大きな口が、大きな爪が、視界の端に揺れる。その一瞬、怪物は少女に自身の顔を近付けると、赤い瞳をさらに濃くさせた。
『っ!?』
まさにその顔は般若だ。
額から突き出た角に、大きな口。その口からは刃物のようにぎらつく歯が私の姿を映して出している。
《いいか? お前のその力は強い。その力を食べれば、俺は黄泉(よみ)の世界で王になれるんだ。いや、この世界の王にもな! それはつまり、世界を手玉に取れるってわけだよ!》
ガハハハハっと、夜には不釣り合いな笑い声が響く。
この、下衆が。
そんな怪物を冷めた目で見た少女は、自身の足に目を向けた。
何止まってるの!
動いて、動いてよ!!
お願いだから──また歩き出してッ!
《俺が王になる方法、それはどうやるかわかるか?》
──ピクッ
あ、動い──
《なぁ女》