第2章 episode 1
逃げて、逃げて!
走って、走って!!
奴らに掴まらないように!
壊されないように!
どうかお願い、私を捕まえないで!!
《お前が、欲しいぃぃいい―――ッ!!》
『っあ!』
草木も眠る頃、1人の少女は暗くなった路地裏を走っていた。だが、後ろから迫る気迫に気を取られ、少女は前につんのめる。
そして、少女の華奢な身体は勢いよく地面を滑った。
『い──たぁ』
鈍い痛み。
地面をスライドしたせいか、制服は所々破け、そしてしまいには擦り切れた手足が悲鳴をあげる。そんな痛みに気負いするなか、上半身を起こし手を見れば、そこからは赤い鮮血が白い柔肌を伝ったていた。
随分と派手にやったみたいね。
その鈍い痛みに眉を寄せる刹那
《あらあら、これは痛そうだねー》
怪物の声が聞こえた。
痛そう?
そんな痛みなんてどうだっていい。
少女の背後
鬼の形をした背丈のある怪物が、何の感情も宿さず私を見下ろしているのだから。