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黒蝶が飛ぶ頃に―陰陽師― R15

第2章 episode 1




逃げて、逃げて!


走って、走って!!


奴らに掴まらないように!


壊されないように!


どうかお願い、私を捕まえないで!!




《お前が、欲しいぃぃいい―――ッ!!》

『っあ!』


草木も眠る頃、1人の少女は暗くなった路地裏を走っていた。だが、後ろから迫る気迫に気を取られ、少女は前につんのめる。

そして、少女の華奢な身体は勢いよく地面を滑った。


『い──たぁ』


鈍い痛み。

地面をスライドしたせいか、制服は所々破け、そしてしまいには擦り切れた手足が悲鳴をあげる。そんな痛みに気負いするなか、上半身を起こし手を見れば、そこからは赤い鮮血が白い柔肌を伝ったていた。

随分と派手にやったみたいね。

その鈍い痛みに眉を寄せる刹那


《あらあら、これは痛そうだねー》


怪物の声が聞こえた。

痛そう?

そんな痛みなんてどうだっていい。

少女の背後
鬼の形をした背丈のある怪物が、何の感情も宿さず私を見下ろしているのだから。

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