第2章 第一試合VS.鈴駆
「それでは【先鋒】前へ!」
審判兼実況の小兎が指示を出すと、リングに上がったのは【六遊怪チーム】鈴駆と【黒崎チーム】ウルキオラだ。
「なーんだ……あのオレンジのお姉ちゃんじゃないのか……」
頭の後ろで手を組んで、鈴駆は残念そうに肩を落とした。
若い女をいたぶる趣味は無いが、あわよくば綺麗なお姉ちゃんの胸に飛び込みたかった……と、下らないことを思いながらウルキオラに視線を向ける。
(……なーんか、薄気味わりぃ兄ちゃんだな)
青白い肌に細身の体。自分の脚力で蹴っ飛ばせば折れそうなほどの痩躯だ。
目の下から頬に流れる涙のような紋様があって、顔の右側に骨のような一部がある。特に異様さを放つのが首もとに空いた穴だ。そこだけ丸くくり貫いたように向こう側が見える……本当の穴だ。
それだけで人間ではないと分かるが、自分たち妖怪とも違った気配を感じた。
「1対1で戦うこと意外、ルールなし!道具の利用も可能です!場外とダウンはカウントをとり、10カウントでKO負けです。よろしいですか?」
「ほいよー」
「………」
鈴駆が軽く手を上げて答え、ウルキオラは無言で目を伏せる。
「それではーーー試合開始!!」
小兎の高らかな宣言に会場が歓声とヤジに包まれる。
(ま、軽く様子を見ますかねー)
「ほっ!と……」
鈴駆は地面を蹴って、ウルキオラを翻弄するようにリングの中を跳び回る。
「ああーっと!鈴駆選手すごい身のこなし!はやくも私、目で追うのがやっとです!」
「大したもんだよそれだけで!この兄ちゃんなんて見えてもーーーっ!?」
上空に跳び上がって得意気に審判を褒めた時だったーーー。パン!と鈴駆の側頭部に弾けるような衝撃が走って場外に弾き飛ばされる。
「っ………!!?」
『ーーー!!?』
六遊怪の面々が驚愕に目を見開き、観客も思わずヤジを忘れて唖然と口を開けたままだ。