第3章 第二試合VS.呂屠
「ウルキオラ!」
男から視線をそらして未だに険悪な言い合いをしているウルキオラを呼ぶ。静かにこちらを見た彼に次峰戦のことを話すと、横からグリムジョーが声を上げた。
「俺が行く」
「いいや。続投だ」
「おい!」
「あれは雑魚だ。全力で戦いたいなら次にしろ」
そう言って有無を言わせずウルキオラはリングに上がった。その背中を唖然と見送って、しばらくしてグリムジョーは盛大に舌を打ってドカリと地面に腰を落とした。
「次峰、ウルキオラVS呂屠 始め!!」
審判の合図で向かい合う二人。しかし六遊怪側の呂屠は何故か余裕の笑みを崩さなかった。
「なんだ……またあんたか」
「………」
「どうせいたぶるなら女の方が良かったなー」
そう言って視線を向ける先はリングの側に佇むだ。その視線にウルキオラが意識を向けた瞬間ーーー呂屠は右腕を刃に変えてウルキオラとの間合いを詰めた。
「おぉっとここで睨み合っていた両者が動いた!呂屠選手の先制攻撃ーーー!!」
「しゃあっ!!」
鋭い刃がウルキオラの首を捉える。
落ちた……と、呂屠は確信した。瞬きの間に奴のすました顔がリングに転がっているだろうと口元に笑みを浮かべた時、目の前の光景に愕然と目を見開く。
「ーーーなっ!?」
『これはウルキオラ選手!呂屠選手のカマイタチを片手で受け止めたーーー!!』
呂屠の刃はウルキオラの薄皮一枚斬ることなく片手のひらで受け止められている。
「………」
目を見開いたまま固まる呂屠の眼前にウルキオラの人差し指が向けられる。爪先に集まる高濃度の妖気に冷や汗を浮かべた呂屠は、ポケットから取り出したものを突きつけて叫んだ。
「っ……これを見ろ!!」
「………」
ウルキオラに突きつけられたのは片手で収まるくらいの小さなスイッチだ。