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掌中之珠~イケメン戦国~

第2章 冥冥之志【メイメイーノーココロザシ】


恐らく……いや、絶対に拾號は何も喋らないだろう。

きっと散々に拷問を受けて死んで仕舞うか、手に負えないと殺されるかのどっちかだ。

そして拾號が命を落としたのを見届けた所で柒號と玖號は帰って来る。

俺はこれまで何度もそんな焦り焦りと身を焼かれる様な不快極まりない時間を経験していた。

今回はどれ位の時間が掛かるだろうか。

あの屈強な拾號の事だ。

壮絶な苛虐にも長い間耐え抜いて仕舞うだろう。

出来るだけ早く、拾號を殺してやってくれ………

俺は唯、そう願い続けていた。


この拾號が囚われて仕舞った結果を『私の所為だ』と十参號は悔い、地面に突っ伏して泣き叫んでいるんだ。

「誰の所為でもねーだろ?
 強いて言うなら逃げ切れなかった拾號本人の責任だ。」

努めて冷静に語る俺を、十参號は大粒の涙に濡れた目でぎりっと睨み上げた。

最近はお前に睨まれてばかりだな。

「私が…彼奴らに気取られなければこんな事にはならなかった!
 拾號が囚われる事にはならなかった!
 私がっ……
 私が捕まって仕舞えば良かったのにっ……」

その言葉に俺は拷問を受ける十参號の姿を想像して、胃液が逆流する感覚に顔を顰めた。

「ねえ、捌號。
 助けに行こう……。
 拾號を助けたいっ。
 捌號、お願い……一緒にっ……」

「巫山戯んなっっ!」

俺の渾身の恫喝に十参號はびくっと全身を強張らせ、怯えた視線で俺を見つめる。

「十参號、お前だって解っているだろーが!
 こういう状況で俺達三ツ者がどうするのかって事を。
 例え今回の結果が本当にお前の所為だったとしても
 それを特別扱いする事なんて絶対に有り得ねえ!」

固まったまま俺を見上げていた十参號の目に、またじわじわと涙が浮かび上がった。

そして再び突っ伏すと、両拳でどんどんと地面を叩き始める。

もう言葉にならない声で喚き散らし慟哭し続ける十参號を、俺は唯黙って見ていてやるしか出来なかった。
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