第7章 明智光秀【アケチーミツヒデ】
どう思ったんだろうな?
俺の事を可笑しな奴だと思っただろうな。
それでも光秀は……俺の切望を叶えてくれると言った。
心底安堵して、褥で熟睡している『』を見下ろす。
信長に託した時にはもう二度と会えねえと思った。
そしてその信長に何かあった時には光秀が護ってくれる。
もう憂う事は何一つねえ。
今度こそ本当にお別れだ……十参號。
お前は俺の事をすっかりと忘れているけど、俺もそうなれたら良いと切実に願うよ。
お前の存在を忘れる事が出来たなら、どんなに………
「なあ……
………触れても良いかな?」
何故だかもう俺が勝手に触れちゃいけねえと思ったんだ。
だからって光秀に聞く事でもねえのは分かっちゃいたけど、それでも誰かに許して貰いたかった。
そして許されてから触れた十参號の頬は、温かくて柔らかくて……あの夜と何も変わっちゃいない。
変わったのは、お前はもう十参號じゃねえっていう些細な事だけだな。
どうか幸福に………
心からそう願った時、『』の目が突然ぱちりと開いた。