第7章 明智光秀【アケチーミツヒデ】
信長自身も拍子抜けする程あっさりと三ツ者に着いて来た。
俺の顔を見た信長は一瞬で全部を悟ってくれた様で本当に助かったよ。
何も語らず大人しく指示に従う信長は、俺達三ツ者の背後に信玄様の姿を見ていたんだと思う。
信玄様と信長……この二人って宿敵で在り好敵手で在り、何よりもお互いを認め合っているって……そう感じるのは俺だけかな?
取り敢えず信長は三ツ者が匿っておいてからその状況を信玄様へ報告すれば、後は赤備えがさらりと全てを薙ぎ払ってくれた。
信長を失って織田軍が右往左往しちまってたけど、この方法が一番手っ取り早かったんだから勘弁して欲しいよ。
俺も信玄様に「最良の判断だった」って讃えられた訳だしさ。
その後、信長を織田軍へ返還するのは三ツ者達に任せて、俺はどうしても片付けておきたい案件の為に暫くの単独行動を許して貰い安土に向かった。
信長の捜索に携わっていた連中を見てみれば、恐らく安土城に残っているのは唯一人………
明智光秀だ。
俺と《同じ》であるあの男の動向が気に掛かって仕方ねえ。
信長が姿を消していた事象について、当然光秀はもう知っているだろう。
じゃあ『』は………?
愛し合う信長と『』は唯一無二、お互いがお互いの半身である様に見えた。
その半身を失った時、『』はどうなって仕舞うのだろうか?
もしまたこの先に信長を失って仕舞う様な状況が訪れた時、『』を護る為にはどうしたら良いのか?
俺はそんな事を考えながら只管に安土へと駆けた。