第1章 秘中之秘【ヒチュウーノーヒ】
そして俺は二十三になり、十参號は十七になった。
四つから三ツ者として仕込まれた十参號の身体は全体が靭やかな筋肉に包まれ、鋭く美しい猛禽の様だ。
それでも十七ともなれば、当然胸も腰も女としての主張を醸し出して来る。
決して豊満では無いが、持って生まれた長い手脚に白い肌……
そして何よりも幼さの残る美貌が三ツ者仲間だけでなく、信玄様の家臣達をも魅了した。
あの信玄様へ忠実を誓った真田幸村だって何度か十参號へ熱い視線を向けていたのを俺は気付いている。
当の十参號はと言えば全くそういった事柄には疎くて、それが俺には安心でもあり心配でもあったのだけど。
だから、あの女好きの信玄様が十参號を厭らしい目で見ているなんていうのは当然で……
まあ、信玄様は否定していたけどな。
例えば俺達三ツ者の絶対的主君である信玄様は、十参號を側女にする事だって可能だ。
信玄様が望めば、十参號は拒む事など許されない。
たった一言夜伽を命じられれば、その日の晩に十参號は信玄様に抱かれなければいけないんだ。
過去には三ツ者でありながら、主君の側女であった女も居たと聞いた。
じゃあ十参號がそうはならないなんて言い切れないだろう。
俺は何時、信玄様が十参號を見初めて仕舞うのか……日々戦々恐々の心持ちで過ごして来た。