第6章 織田信長【オダーノブナガ】
その晩、俺は決死の覚悟で安土城天主への潜入に成功した。
只管に気配を消し、信長が戻って来るのを待つ。
其処にまさか十参號までやって来るとはな……。
十参號にはもう既に信長の手が付いていたのか?
当然の如くそう思ったが、どうやらそういう訳でもねえ様子だ。
その場で見せられたのはお互いを思い遣り慈しむ、信長と『』の優しい結び付きだった。
『』は俺の存在など覚えちゃいねーだろうが、それでもその目前に自分の姿を晒すのは躊躇われた。
そこで『』が眠るのを待って静かに動き出してみれば、信長は早々に俺の存在に気付く。
明らかな曲者である俺を頭熟しに排除するでも無く、きっちりと状況を分析しようとする態度。
その間にも隣で眠る『』を然り気無く庇い、決して隙は見せない。
そんな信長に俺は一目置き、そして自分の決心はやはり間違っていないと悟った。
だから俺は全てを真摯に語ったんだ。
自分の事も、『』の過去も………。
この先、信長に『』を託すのであれば一切誤魔化す可きじゃねえと思ったから。
だけど俺はたった一つだけ…………
嘘を吐いた。