第5章 雨露霜雪【ウロソウセツ】
結局俺は帯同していた柒號に引き摺られる様にして一旦甲斐へ戻り、その後春日山城に居る信玄様に事の顛末を報告した。
語ったのは柒號だけで、俺はその隣で茫然と立ち竦んでいただけだったが。
そして柒號が語り終えるより先に、信玄様が俺の襟首を掴んでぎりぎりと締め上げる。
「十参號を連れ帰れ!
ああ、生きていようが屍だろうが関係ねえ!
必ず俺の前に十参號を連れて来い!
分かったな、捌號!!」
抑えきれない憤怒に燃えた視線で怒鳴り付ける信玄様の姿に、俺は漸く正気を取り戻した。
十参號を救えるのならば、自分を制するものなど何一つねえ。
柒號にはまだ仕事が有る、それに複数よりも単独で動いた方が奴等に悟られ難い筈だ。
俺はその足で十参號が囚われている場所へ一直線に駆け戻った。