第5章 雨露霜雪【ウロソウセツ】
そんな最中、珍しく誰の手も掛かっていない時に、十参號が一度だけ掠れた声を絞り出した。
「……信玄…様…
赦し…て……」
その言葉を聞いた男共は色めき立つ。
俺もそうだ。
恐らく十参號は囚われた自分を責め、主君に詫びたかっただけだろう。
だが信玄様の名が出た事で、やっと十参號は殺して貰える!
この地獄の様な苛虐から解放される!
そう思ったのに……………
男共はこの先自分達が行った行為を語られない様にする為に喉を潰す劇薬を飲ませ、その激痛に苦しむ十参號を再び犯し始めた。
俺は願った筈だ……
なあ、そうだろ?
自分が無間地獄に堕ちるから、十参號は見逃してくれ…と。
『妹』と知りながら愛した俺と、『兄』と知らないまま応えた十参號が同じ罪な訳がねえだろうが!
いや………違う。
最愛の『妹』が犯されて疵付けられて行く様を、じっと見続けなきゃならねえ………
此れが俺に与えられた罰なのか?
十参號を救う事すら出来なかった、何なら俺がこの手で殺して遣りたかった………
そうやって自分を生涯責め続けなきゃいけねえ、此れが無間地獄か?
神か仏か知らねえが………あんた等は凄げえな。
俺が一番苦しむ方法をちゃんと知っていやがるんだから……。