第3章 慧可断臂【エカダンピ】
「お前……
誰に何を吹き込まれた?」
俺の問いに十参號はびくりと身体を強張らせた。
「言え、十参號。
言わなきゃ俺はお前の手首を離さねえ。」
凄味を効かせて脅してやれば、十参号は観念した様子で口を開く。
「陸號に……」
……やはり思った通りだな。
陸號は現在の三ツ者の中で十参號を除けば唯一の女だ。
そう、『女』という意味では十参號を含めても唯一なのかもしれねえ。
妖艶な美貌と豊満な肉体を武器として、色事に特化した諜報を一手に担っている。
どうやら信玄様の手が付いた事もあるらしいが、陸號はそれを何一つ鼻に掛ける事も無く、常に俺達と同等の立場に徹していた。
その辺りは流石だと思う。
俺も姉弟子である陸號の事は素直に尊敬していた。
只、十参號に陸號の様な『仕事』をさせるのだけは、どーしても我慢為らなかったんだ。
だから陸號の担っている『仕事』の内容は十参號には知られない様、細心の注意を払って来たのに……。